
新卒からマーケティングの部署に配属されて3年目になる筆者が、若手目線でマーケの実情や新卒から採用してもらえる工夫を解説します。
そもそもマーケティングとは?
マーケティングとは「経営活動」です。いかに安く仕入れ、高く売るかを単独で行うことを求められるお仕事です。
マーケティングと聞くと、Web広告の出向や販促のキャンペーンを行うイメージがあるかもしれません。実際には、出稿やキャンペーン後のデータ分析や調査、集計、資料作成と経営層への報告といった地味な業務の繰り返しです。扱う媒体は多岐にわたり、SNSからメール、時にオフラインのチラシ作成まで行います。
営業効率を改善する施策や解約防止など、集客だけでなく経営にかかわる人の流れを管理するお仕事といえます。
新卒にとってのマーケティング系職種の魅力・やりがいは?
①【上流工程を知れる!】企業の経営活動に関われる
「上流」とは、会社の意思決定をする部署や働き方のことです。製品やサービスがどのように企画され、市場に投入されるかという経営の核心に関わることができます。
毎週CMOはもちろん、営業部長や時にはCEOに施策の運用結果を説明します。
会社の経営をしている人たちに新卒のペーペーがダメだしするというレアな経験が得られる仕事です。
②【経験を積める!】規模のデカい施策に関われる
新卒から数百~数千万円規模の予算を動かし、顧客のニーズや市場トレンドに基づいた施策を動かす経験は勉強になりますし、自分の判断力が成長していく実感を得られます。
下手したら会社が買える規模の予算を自分で動かす方法を決め、無駄に使わないようにする…めちゃくちゃヒリつく仕事ですがメンタルは太くなります。
③【刺激を得られる!】様々なアイデアや学びを得られる
マーケティング職は常に新しいトレンドや技術と向き合う必要があります。最新の消費者トレンド、AI技術の活用方法など、色々な情報に触れると視野が広がります。
さらに、マーケティングはさまざまな職種と協働する機会が多いため、デザイナーやエンジニア、営業担当者から多様な知識や考え方を学ぶことができます。
あと単純に面白い人が多いです。投資やWeb系の副業で年収2千万稼いでいる人、アンティークの家具に詳しい人、聞いたことがない植物ばっかり育てている人…。普通に人と雑談するだけでも将来のキャリア観が培えるので、出社してて飽きません。
マーケティング職種で新卒採用の募集をしている会社はどんな会社?
マーケティング職種で新卒を採用している企業は、例えば以下があります。
会社種別 | 企業名 |
●大手メーカー、食品・飲料 | P&G、ネスレ、サントリー |
●IT・テクノロジー企業 | 楽天、サイバーエージェント、メルカリ |
●広告代理店、調査、コンサル系 | 電通、博報堂、マクロミル、アクセンチュア |
最近では、急成長しているスタートアップやベンチャー企業もマーケティング職の新卒採用を増やしています。組織が小さい分、早い段階から幅広い業務を経験できるチャンスがあります。求人はかなり希少ですが、事業会社のマーケティング担当になれる見込みもあるかもしれません。
マーケターの業務内容を紹介
①調査・分析
業務の基本となるのが、調査・分析です。市場動向や顧客のニーズ、競合の状況などを詳細に調査し、そのデータを分析して戦略立案に活かします。手法として、アクセス解析・顧客アンケート・コンテンツ調査が挙げられます。
定性・定量のどちらからも調査を行い、課題抽出を行うことで次のアクションにつなげます。
数字を読む、コツコツ集計してデータをためるなど、地味で細かい業務ですが、筆者は結構好きです。
②広告出稿・配信設定
ターゲットとなる顧客層に効率的にアプローチするため、様々な媒体を活用して情報を届けます。
マーケティングの実務で重要なことは「誰に・何を・いつ」出すかです。
広告の運用なら、セグメントに対するキーワード選定や入札額の調整、広告文の作成などを行います。メール配信やSNS運用なら、配信ターゲットを絞り、コンテンツ配信スケジュールを管理したり、クリエイティブの選定をしたりします。
③施策の効果検証
マーケティング施策を実施した後は、その効果を適切に計測・検証する業務が重要です。PDCAの”C”ですね。
広告運用でいえば、予算の消化率に対するCPA(顧客獲得単価)やCVR(コンバージョン率)、ROAS(広告費用対効果)などの数値指標を計測し、目標値との乖離を分析します。こんな感じに英語の略語が頻発する会議に次々ジョインされるので、1年目は意味不明すぎて議事録がとれないというあるあるがあります。
そんな感じで効果検証を通し、成功した施策に加え、失敗した施策からも学びを得て、次の戦略に活かすという視点が重要です。
④提案・レポーティング
経営層やクライアントに対し、施策の結果や検証の内容を伝えるのも重要な業務です。データを単に羅列するだけでなく、そこから得られる示唆や次のアクションプランを提案します。
マーケティングの業務では、PowerPointやExcelを使った資料作成能力も求められます。報告相手は自分が思っている1,000,000倍内容を理解してくれないので、複雑なデータを視覚的に分かりやすくグラフ化したり、重要なポイントを簡潔に要約したりする技術が必要です。
プレゼンスキルも重要で、作成した資料を使って口頭でわかりやすく説明する能力が評価されます。レポーティングは施策を進めるうえで避けられない業務なのですが、筆者はコミュ障の陰者なので、この業務は大嫌いです。
新卒のマーケティング採用率は約3%!なぜ採用が難しいのか?
理由①募集枠が限られている
新卒のマーケティング職の採用率が低い最大の理由は、そもそもの募集枠が非常に限られていることにあります。求人サイトで「自分の住む地域×新卒×マーケティング」で検索してみてください。その検索結果が現実です。
一般的な大手企業では、新卒採用全体の5〜10%程度しかマーケティング職の枠を設けていないケースが多いです。特に日本の伝統的な企業では、新卒はまず営業や製造などの現場を経験させ、その後異動でマーケティング部門に配属するキャリアパスを採用していることも多いため、最初からマーケティング職として採用される枠は限定的です。(筆者も営業経験がないため、足りないスキルや後悔する場面が多くあります…)
また、マーケティング領域は企業の中でも注目度が高い部門であるため、応募者が多く競争率が非常に高くなる傾向にあります。限られた枠に対して多くの学生が応募するため、採用のハードルが上がってしまうのです。
理由②新卒には専門性が高い
マーケティング職は、他の職種と比べて専門性が高い業務が多く、新卒では即戦力になりにくいと思われがちです。データ分析手法やマーケティング理論、各種デジタルツールの使い方など、専門的な知識が求められます。
例えば、SEO対策やSNS運用、広告の最適化など、基本的な知識だけでなく実務経験を通じたノウハウが必要です。また、リサーチでは伝統的なマーケティング理論(SWOT分析、3C理論など)を実際のビジネスに適用する能力も求められます。
新卒学生の多くは知識があっても、マーケティングの実践的なスキルを持っていません。このギャップのため、具体的に実務内容を想像できずに面接で落とされやすくなります。
理由③経験が求められる
マーケティングの現場では、理論だけでなく実践的な経験が重視される傾向にあります。市場調査の設計方法、広告運用のコツ、クリエイティブの作り方など、実際に手を動かして学ぶべき要素が多いため、ある程度の経験がある人材が好まれます。
特に中小企業やスタートアップでは、採用したその日から成果を出せる即戦力を求める傾向があります。インターンや副業などでマーケティング経験を積んでいない新卒学生は不利になりがちで、実績やポートフォリオを持つ学生が優先的に採用される場合が多いです。
また、マーケティングの効果は数字で測定されるため、「この施策でこれだけの成果を出した」といった具体的な実績を示せるかどうかが重視されます。新卒ではそうした実績を積む機会が限られているため、採用の壁となっているのです。
理由④求められるスキルが特殊化している
マーケティング職では、論理的思考力やデータ分析能力といった基本的なスキルに加え、業界や商材、担当する業務内容によって求められる特殊なスキルが存在します。
SQLを用いてデータベースを操作するスキルや、MAツールを使用したことがある新卒学生はかなり希少ですよね。
加えて、近年ではデータサイエンスの知識やAIツールの活用能力など、より高度なスキルの需要も高まっています。
新卒マーケターに求められるスキルは?
①思考力
新卒マーケターに最も求められるスキルの一つが、論理的かつ創造的な思考力です。マーケティングは「なぜ」を常に問いかけ、顧客の行動や市場の動きを論理的に分析し、課題を見つけ出す能力が必要です。
具体的には、因果関係を明確に整理できる論理的思考力、データから本質的な問題点を見抜く分析力、そして新しい切り口やアイデアを生み出す創造的思考力が重要です。例えば、「なぜこの商品は20代女性に売れないのか」「どうすれば顧客のリピート率を高められるか」といった問いに対して、多面的に考察できる力が求められます。
筆者が特に必要と感じているのは、「仮説思考」です。「こうすれば顧客はこう反応するのではないか」という仮説を立て、検証し、改善するサイクルを回す。このような思考力は、大学の学びや日常生活の中で意識的に鍛えることはできますが、意外と身についていなかったり、人に説明できなかったりするスキルの代表でしょう。
②情報処理力
マーケティングの現場では膨大な量のデータを扱うため、これらの情報を効率的に処理し、意味ある洞察を引き出す能力が不可欠です。具体的には、ExcelやSpreadsheetでのデータ加工・分析スキル、Google AnalyticsなどのWeb解析ツールの基本的な操作、グラフや図表を使った視覚化能力などが挙げられます。
というか業務のスキル以前に大量のチャットを確認・返信していく作業が発生します。
新卒で会社や業務についての知識がない場合は、どこまで自分だけで回答できて、どこまで人に聞かないと答えられないのかが判断できません。チャットの確認と返信をいかに短く処理できるかで自分が詰める経験値が変わってきます。
自分は新卒でも同僚は9割がた中途なので、「読む➡理解する➡アウトプットする」という一連の情報処理が速くないとどんどん周りから取り残されてしまいます。
③学習能力
マーケティングは常に変化する分野であり、新しいテクノロジーやトレンド、手法が次々と登場します。そのため、新卒マーケターには高い学習能力と知識を更新し続ける姿勢が求められます。
最近だとAIプロンプトの書き方、ビックデータの処理など、マーケティング環境は日々変化しています。こうした変化に対応するためには、常に新しい情報をキャッチアップし、自分のスキルをアップデートする意欲と能力が必要です。
また、未知の領域に対する好奇心も重要です。筆者の会社だけか漏れないですが、突然自社とは異なる業界や商材の調査を任されたりします。そんな時はその業界特有の知識や顧客心理を短期間で調べ、学び取る力が求められます。このような学習能力は、大学での研究や課外活動を通じて培うことができ、新卒マーケターとしての適性を示すチャンスです。
④コミュニケーション能力
マーケティング職に関わらず新卒なら誰もがぶち当たる壁ですよね。
提案内容や分析結果を分かりやすく伝えるプレゼン能力、チーム内で建設的な議論を促進するディスカッション能力、そして社内の異なる部門(営業、開発、経営層など)と効果的に連携するための折衝・交渉能力などが挙げられます。
そんな感じで、マーケティングはとにかく会議で喋る機会が多いです。コミュ力がないから接客が嫌、という理由で新卒マーケを選ぶとめちゃくちゃ後悔します(実話)。
新卒でマーケティング職採用されるエントリー方法5選
①職種別に採用している企業に応募する
新卒でマーケティング職を目指すなら、総合職ではなく職種別採用を行っている企業を狙うことが効果的です。職種別採用では「マーケティング職」として明確に募集しているため、入社後にマーケティング部門に配属される確率が格段に高くなります。
P&Gやネスレなどのグローバル消費財メーカー、楽天やLINEなどのIT企業、リクルートやサイバーエージェントなどの広告・メディア企業が職種別採用を実施しています。
②ベンチャー気質の会社に応募する
ベンチャー気質の企業では組織が柔軟で、ポテンシャルや意欲を重視する傾向があります。
新卒から責任ある業務を任され、入社1年目からマーケティング施策の企画立案や予算管理に携わることも珍しくありません。また、少人数の組織であるため、マーケティングのあらゆる側面(データ分析、広告運用、コンテンツ制作など)を経験できる可能性が高いです。
③IT・テック系の会社に応募する
これは後々マーケターに転身するプランで、筆者のおすすめです。マーケティング担当者に求められるスキルが多様化しているため、会社によって異なったりします。そのため、専門性の高い知識や経験があれば、希少価値の高いマーケターになれる可能性が高まります。
Google Analyticsなどのデジタルツールやデータを駆使した経験、HTML/CSSが読める、ウェブサイトの制作経験があれば、将来的なキャリアにも有利です。
④マーケティング支援会社・代理店に応募する
支援会社や代理店は主業務が調査・分析や広告運用なので、ほぼ確定で新卒からマーケティング関連の仕事に就けます。
複数のクライアント企業のマーケティング支援に関わることで、幅広い業界や商材のマーケティングノウハウを短期間で習得できます。また、プロのマーケターからの指導を受けられる環境が整っていることも大きな魅力です。
クライアントワークになるので、応募の際はコミュニケーション能力や納期を守るきっちりした人柄をアピールしましょう。
⑤新卒スカウトサービスに登録する
筆者はこの方法で新卒からマーケティング職採用へたどり着きました。
企業側からすると、少数精鋭のマーケティング担当者を募集するのに高い金をかけて求人サイトへ出稿するのは非効率です。そのため、スカウトサービスを通して適性のありそうな学生に非公開スカウトを送っている、ということがあるようです。
新卒のスカウトサービスとしては、Offer Boxやキミスカが有名です。
こうしたスカウトサービスに登録し、プロフィール欄にマーケティングや洞察の深さをアピールして自分の情報を充実させておきましょう。
さらに新卒でマーケティング採用を勝ち取る可能性を高めるには?有効なガクチカ・経験3選
①SNSアカウントを育ててみる
重要なのは単にフォロワー数を増やすだけでなく、なぜその戦略を選んだのか、どのようなPDCAサイクルを回したのか、結果から何を学んだのかを言語化できることです。数字で示せる成果と共に、思考プロセスを説明できれば、新卒でも実務経験がある人材として高く評価されるでしょう。
また、SNSアカウント運用では、リアルタイムで市場の反応を見ることができるため、「ユーザーが求めるものは何か」という視点を養うことが可能です。これはマーケティングの本質に直結する経験であり、企業側も採用の判断材料として重視する傾向にあります。
無料で始められますし、インスタやX(旧 Twitter)は業務で使うこともあるので、操作に慣れていることもアピールになります。
②web系のバイト・インターンに挑戦してみる
マーケティング職を目指すなら、学生時代にweb系のアルバイトやインターンシップを経験しておくことが非常に有効です。
目的としては、ExcelやSpreadshertを扱えるためスムーズに実務に移行できることを示し、デジタル人材になる準備をしているとアピールすることです。
求人サイトを開けば、インターンやスタートアップ企業でのマーケティングアシスタント、ECサイトの運営補助など、意外と学生バイトにも様々な選択肢があります。何らかの数字的な成果を出せればなお良しです!
ちなみに筆者はSEOライターのバイトをしておりました。全然稼げませんでしたが、Google Workspace の使い方が学べましたし、リサーチを通して色んな分野の知識も付けれたし、キーワード対策の実務感も分かりました。
③AI関連の勉強をする
近年のマーケティング現場では、AI技術の活用が急速に進んでいます。そのため、AIに関する基礎知識やツールの使い方を学んでおくことは、新卒マーケターとしての価値を高める効果的な方法です。
具体的には、ChatGPTやMidjourney、Claudeなどの生成AIツールの特性や活用法を学び、趣味や大学の課題にどう活用できるかを研究してみましょう。
ちなみに、筆者は面倒な返信や専門外のコード編集はAIにやらせてます。何なら実はこの記事もAIで作成したものを筆者が加筆・修正したものです。
そんな感じで新しい技術や学びに敏感であることがアピールできれば採用の可能性が高まります。
④なぜマーケティングをやりたいのかを明確にする
職種で募集している場合、「なぜマーケティングを志望するのか」という質問はほぼ100%問われます。この問いに対して明確で説得力のある回答ができるかどうかが、採用の大きな分かれ道でしょう。
「人の心理や行動に興味があり、それがビジネスにどう影響するかを探求したい」「データと創造性の両方を活かせる仕事に魅力を感じている」「顧客視点でビジネスの課題を解決することにやりがいを感じる」など、自分ならではの理由を深掘りしましょう。
また、マーケティングのどの側面に特に関心があるのか(データ分析、ブランド構築、コンテンツ制作など)、なぜその企業でマーケティングを学びたいのかといった点も具体的に説明できると良いでしょう。
志望動機が明確であればあるほど、面接官に「この学生はマーケティングに対する理解と情熱がある」という印象を与えることができます。よっぽど何もなければ、AIに壁打ちして最もらしい理由を作ってもらうのも効果的かもしれませんね。
⑤自分の行動を徹底的に言語化する
マーケティングは他人に自分自身の思考や行動プロセスを論理的に説明する仕事です。
サークル活動、アルバイト、学業などについて、「なぜその選択をしたのか」「どのような課題に直面し、どう解決したのか」「その経験から何を学んだのか」を徹底的に言語化する練習をしましょう。このような自己分析は、面接でのエピソード共有をより説得力のあるものにします。
筆者がいまだにやっているのは、日常生活の中での消費行動や情報収集プロセスに理由付けすることです。「なぜ自分はランチにこの料理を注文したのか」「どの情報が自分の決断に影響したのか」を考える習慣をつけるようにしています。
こんな感じで「何となく」行われている行動の理由を徹底的に言語化すると、洞察力が深まりますし、他人への説明に具体性や一貫性を持たせられます。面接でも大いに役に立つでしょう。
まとめ
新卒でマーケティング職に就くことは確かに難しい挑戦ですが、正しい準備と戦略的なアプローチによって十分に可能性を高めることができます。マーケティングは理論と実践の両面が求められる分野であり、学生時代からできる準備は意に多かったりします。
まず、マーケティングの基礎知識を身につけることはもちろん、SNSアカウント運用やWeb系インターンなどの実践的な経験を積むことが重要です。これらの経験を通じて、データ分析力や論理的思考力、コミュニケーション能力といった、マーケターに必要なスキルを養いましょう。
現在のデジタル社会において、マーケティングの重要性はますます高まっています。困難を乗り越え、新卒マーケターとしてのキャリアをスタートさせることができれば、幅広い業界や職種で活躍できる可能性が広がっています。自分の強みを最大限に活かして、マーケティングの世界に飛び込んでみましょう。
それでは、またどこかで!
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